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皮膚がん(悪性腫瘍)

皮膚がんといえばメラノーマ(悪性黒色腫)が広く知られていますが、皮膚がんには他にもいくつかの種類が存在します。それぞれの疾患について、特徴や好発部位、検査・治療方法を解説します。

日光角化症(光線角化症)

日光角化症は、長年の紫外線刺激によって発生する早期の皮膚がんです。

病態 皮膚の角化細胞が表皮内でがん化した病変です。皮膚の一番表面にある表皮内にとどまっているため、表皮内癌とも呼ばれます。
好発対象・部位 慢性的な紫外線の刺激によって、顔や手などの日光が当たる部位に発生します。60代以上の高齢者に多く発症しますが、色素性乾皮症などの基礎疾患がある場合は小児期に発症することもあります。日本国内では毎年10万人以上が発症していると推定されています。
症状の特徴 顔面や手の甲などの日光が当たりやすい場所に、表面がカサカサしたかさぶたを伴う赤みを帯びたシミとして現れます。周囲の正常な皮膚との境界が不明瞭で、ときに皮角と呼ばれる灰白色のツノ状の突起を伴うことがあります。
進行した場合 病変が盛り上がるとともに皮膚の奥深くへ浸潤し、全身へ転移する可能性がある有棘細胞癌に進展するリスクがあります。
検査方法 ダーモスコピーを用いて観察します(保険適用)。確定診断のために、局所麻酔下で病変の一部を採取して病理組織検査(顕微鏡で組織を見る検査)を行う場合があります。
治療法 外用薬(イミキモド製剤)による治療のほか、液体窒素による凍結療法や外科的手術が行われます。

赤みが強くなる、病変が拡大する、皮膚がえぐれる(潰瘍化する)などの変化が見られた場合は、有棘細胞癌へ進展している可能性があるため詳しい検査が必要です。

ボーエン病(Bowen病)

ボーエン病は、表皮内にとどまる皮膚がんの一種で、緩やかに病変が広がっていく特徴があります。

病態 皮膚の角化細胞ががん化した病変で、日光角化症と同様に表皮内にとどまる表皮内癌です。
好発対象・部位 受診時の平均年齢は75.2歳で、70代が発症のピークです。男女比は1:1.21と女性にやや多く見られます。発症要因には紫外線、ヒトパピローマウイルス感染、ヒ素の摂取などが関与します。
症状の特徴 左右非対称で、境界が比較的はっきりとした紅褐色の斑状病変で、緩やかに拡大します。色調は不均一で、一部が灰色がかって見えることもあります。男性では頭部・顔面・耳介、女性では下肢などに多く発生します。
進行した場合 表皮を越えて真皮深層へと浸潤し、悪性度の高い有棘細胞癌へ進展することがあります。
検査方法 局所麻酔下で病変の一部を切除し、顕微鏡で組織の状態を確認する病理検査を行って確定診断を下します。
治療法 外科的手術による病変の切除が基本となります。必要に応じて提携の医療機関をご紹介いたします。

有棘細胞癌

有棘細胞癌は、基底細胞癌に次いで日本国内で2番目に発症頻度が高い皮膚がんです。

病態 皮膚の表皮を構成する角化細胞が悪性化した皮膚がんです。
好発対象・部位 受診患者の約8割が70歳以上で、80代にピークがあります。男女比は1.15:1と男性にやや多く見られます。高齢者の顔面、額、頭皮(特に脱毛部)、耳介、手背などの日光露出部に好発します。人口 10 万人あたり約 2.5 人に発生するとされています。
症状の特徴

紅色から肌色で、表面にかさぶたを伴う盛り上がったシミのような病変、あるいは皮膚から盛り上がった結節(しこり)として現れます。進行すると表面が崩れて潰瘍化したり、壊死組織を伴ってカリフラワー状に増殖したりします。

進行した場合 皮膚の深部へ浸潤し、リンパ節や他臓器へ全身転移を起こす危険性があります。
検査方法 局所麻酔下で組織の一部を採取し、病理検査を実施して確定診断を行います。転移の有無を調べるため画像検査を行うこともあります。
治療法 手術による切除が基本です。進行度合いに応じて放射線治療や抗がん剤による化学療法を併用することがあり、提携の専門医療機関へご紹介します。

基底細胞癌

基底細胞癌は、日本国内の皮膚がんの中で最も発生頻度が高い病態です。

病態 毛包(毛穴)を構成する細胞に由来してがん化する疾患です。
好発対象・部位 40歳以上の顔面正中部(鼻や目の周囲など)に好発し、性差はありません。紫外線や外傷、放射線、瘢痕などが誘因となります。色素性乾皮症や母斑性基底細胞癌症候群、脂腺母斑などの遺伝的疾患がある場合は、若年層でも多発することがあります。
症状の特徴 一見するとほくろに似ていますが、ほくろよりも青黒く、表面にろうそくのロウのような独特の光沢を持つのが特徴です。進行すると中央がえぐれて潰瘍を形成します。
進行した場合 遠隔転移することは稀ですが、局所の正常組織を破壊しながら深部へ拡大するため、顔面の変形など整容面で大きな問題となります。
検査方法 ダーモスコピーによる観察で特徴的な毛細血管拡張などを確認します。特徴的な所見がない場合、診断を確定するために局所麻酔下で病変部を切り取り、病理組織検査にて確定診断することがあります。
治療法 外科手術による切除が中心となります。再発を防ぐため周囲の正常組織を含めて切除し、皮膚の欠損部には皮弁形成や植皮術を行う場合があります。適切な治療のため提携医療機関をご紹介します。

パジェット病(乳房パジェット病・乳房外パジェット病)

アポクリン汗腺などの汗を分泌する腺細胞から発生する悪性腫瘍です。

病態 汗を分泌する腺細胞(汗腺)由来のがん細胞が皮膚表皮内に広がる疾患です。乳頭部にできる乳房パジェット病と、それ以外の部位にできる乳房外パジェット病に大別されます。
好発対象・部位
  • 乳房パジェット病:中高年の女性に好発し、男性の発症は極めて稀です。
  • 乳房外パジェット病:高齢者の外陰部、肛門周囲、脇の下などに好発します。
症状の特徴
  • 乳房パジェット病:片側の乳頭を中心に境界明瞭な赤み、ただれ(びらん)、かさぶたを生じます。年単位で乳輪や周囲の皮膚に拡大します。病変部は固さがあります。通常片側性(左右どちらか一方に発生する)です。一見、湿疹のようにも見えますが、ステロイド外用薬を使用しても改善しない湿疹様病変が特徴です。
  • 乳房外パジェット病:外陰部や脇の下の鮮紅色の病変で、徐々に拡大します。二次的に湿疹やカンジダ症を合併して痒みを伴うことがあります。
進行した場合 病変部にしこりを触れるようになり、進行すると所属リンパ節や遠隔臓器へ転移する可能性があります。
検査方法 病変部の一部を採取して病理組織検査を行い、診断を確定します。
治療法 がん細胞の取り残しを防ぐため、病変周囲を含めた広範囲切除を行います。術前に複数箇所の組織を採取して病変の広がりを確認するマッピング生検を実施し、切除範囲を決定した上で手術を行います。高度な手術治療のため提携医療機関をご紹介します。

メラノーマ(悪性黒色腫)

メラノーマは、メラニン色素を作る細胞(メラノサイト)が悪性化した、悪性度の高い皮膚がんです。国内では人口10万人あたり約2人(年間1,500〜2,000例)の発症と報告されています。

病態 メラニン色素を産生する色素細胞(メラノサイト)ががん化した病態です。
好発対象 紫外線の影響が強く関与しており、メラニン色素の少ない(紫外線防御能の低い)白人に多く見られます。日本人を含む黄色人種は比較的低頻度ですが、紫外線防御や早期発見が重要です。
症状の特徴 多くは多量のメラニンを産生するため黒色や濃褐色を呈し、色調の濃淡や不規則な形状がみられます。極めて稀に色素を作らない無色素性メラノーマ(肌色〜淡紅色)も存在します。
進行した場合 リンパ管や血管を通じて、リンパ節や全身の多臓器へ転移することがあります。
検査方法 ダーモスコピーによる詳細な観察を行い、悪性の疑いがある場合は局所麻酔下での生検(組織を切り取る)検査を行い、病理検査を行います。悪性黒色腫の疑いがある場合は、病変の一部を切り取る検査ではなく、可能な限り、病変をすべて切り取る全切除生検を行うことが望ましいとされています。全身の転移を調べるためCTやMRI、PET検査などを実施します。
治療法 広範囲の手術的切除が基本となります。進行度に応じて、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬を用いた化学療法、放射線治療などを組み合わせます。提携の専門医療機関をご紹介します。

メラノーマの主な病型分類

メラノーマは発生部位や病変の広がり方によって主に4つのタイプに分類されます。

末端黒子型 足の裏、手のひら、手足の爪(爪下部)などに発生しやすく、日本人のメラノーマの約40%を占める最も多いタイプです。
表在拡大型 胸・腹・背中などの体幹部や手足の付け根付近に発生しやすく、色白の方に多く見られます。
結節型 全身あらゆる部位に生じ、がん細胞の塊が徐々に大きくなっていくタイプです。結節のまわりには通常、色素斑(染み出し)がみられません。
悪性黒子型 高齢者の顔面など日光露出部に好発し、不規則な形の色素斑(シミ)が年単位で徐々に拡大した後、中央部に結節を生じます。

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