メニュー

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎とは

【ご注意】他院で開始したデュピクセントやオルミエント等の新規治療薬を当院で継続したい方は、必ず必要事項(※)が記載してある紹介状をお持ち下さい。デュピクセント開始時の状態がわからないと、保険診療で継続できません(保険診療上の決まり事です)。※必要事項:投与開始年月日、投与開始時のIGAスコア、EASIスコア、アトピー性皮膚炎の面積

かゆみの激しい湿疹(赤いぶつぶつ、かさかさ)が良くなったり悪くなったりを繰り返しながら慢性的に続く皮膚炎です。

乳幼児期に最初に症状が出て小児期(思春期まで)に良くなるパターンと、良くならずに成人まで症状が続くパターンがあります。また、頻度は低いですが思春期/成人期に初めて症状が出るパターンもあります。

湿疹は左右対称性に分布し、年齢によって湿疹が出やすい場所が異なります。

  • 乳児期:はじめに頭、顔に症状が出て、体、手足に範囲が広がる
  • 幼小児期:首、手足の関節
  • 思春期・成人期:上半身(頭、首、胸、背)の症状が強いことが多い

「アトピー性皮膚炎か否か」は、皮膚の炎症の状態だけで決まるのではなく、どれくらいの期間、症状が続いていたり、繰り返しているかが診断のポイントです。

そのため、初めてお会いした1回だけでは、これまでの経過が把握できないことから、診断がつかない場合があります。

乳児(1歳まで)のお子さんの場合は2か月間それ以上の年齢の方では6か月間、症状が続いているか繰り返している、という経過の情報がアトピー性皮膚炎の診断には必要です。

症状が出始めた初期の頃は、その症状がどれくらい続くか、繰り返すかという情報がないため、アトピー性皮膚炎かどうかの確実な判断がまだできないのです。

赤ちゃんや小さなお子さんを連れてこられるお母さんに、よく聞かれるのは「この子はアトピーですか?」という質問です。

その質問に「アトピーです」と答えるとお母さん方は一様に絶望した反応を示されますが、前述のとおり、思春期までに治ってしまう場合もありますし、また、アトピーは「治療次第で」痒みや見た目の変化がほとんどない状態に持っていくことができます。重症な方にも高い効果を示す注射のお薬も開発され、以前と比べれば、アトピー性皮膚炎はかなりコントロールしやすい病気になってきました。ですので、アトピーか否かで命運が決まる、というように思いつめないで頂きたいと思います。

ただ、この「治療次第で」というのがポイントで、この「治療」というのは、病院が提供してくれる薬だけを指すのではありません。薬の種類が適切であれば良くなる、というわけではない事に注意が必要です。

他の病院をいくつも回ったがどこを受診しても良くならない、という患者さんを診察する機会がよくありますが、それぞれの病院で出されている薬の種類は適切であることがほとんどです。

しかし、その薬を実際「患者さんがどう使っているのか」を伺ってみると、塗り方、塗る量、塗る回数、塗る期間が適切でないことが多々あります。

薬の正しくない使い方の例:「痒い時、赤い時だけ塗っている」、「たくさん塗ると副作用が心配だからうっすらとしか塗っていない」、「保湿はべたべたするのでしていない」、「痒いのでごしごし擦るように塗っている」など…。

つまり、出された薬が適切であるにもかかわらず、それを患者さんが自宅で正しく使えていないがために、なかなか良くならなかったり、しょっちゅうぶり返したりしているのです。「治療次第」というのはこのことです。

では、なぜ薬を正しく使えていないのでしょうか?

それは、使い方を教わっていないから、もしくは、教わっても身につく前に忘れてしまうから、ということに尽きます。

いろいろな病院で勤務してきましたが、患者さん一人一人対して、医師が薬の使い方まで詳しく説明するのは、時間的に制約が多く不可能でした。

この点を解決するため、当院では、診察後に、薬の塗り方についての詳しい説明書をお渡しし、いつでも見返せるようにしています。

 

 

 

 

 

アトピー性皮膚炎は、出された薬を使って患者さんが「自分で治療する」という意識が何よりも大切ですし、ご自宅でのご自身による治療次第で」良くもなるし悪くもなる、という病気です。

薬の塗り方

ここで話を戻して、前述の使い方がなぜ適切ではないのか、一つ一つ見ていきましょう。

①痒い時、赤みがある時だけ塗っている → ×

薬を一定期間塗って痒みや赤みがなくなると、一見治ったように見えるため、そこで薬を塗るのをぱったりと止めてしまい、しばらく経つとまたぶり返す、というのを繰り返している患者さんが多くいます。多くの方が勘違いされているのですが、痒みや赤みが一時的になくなったとしても、それは治りきったのではありません肉眼では見えない細胞レベルで、炎症がまだくすぶっているのです。薬を塗らなくなると、このくすぶっている炎症が、再び赤みや痒みとして現れます。治りきる前に塗るのをやめてしまうからまたぶり返す、ということなのです。

ではどうしたらよいでしょうか。日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎ガイドラインでは、このくすぶっている炎症が治まるまで、薬を続ける事が推奨されています。

続けると言っても、薬の強さや塗る回数は、炎症がひどい時とは異なります。例えば、炎症がひどい時は強いステロイドを毎日1日2回塗っていたのを、弱いステロイドやコレクチム・プロトピックなどの非ステロイド系の薬などに変えて、1日1回にしたり、1日おき、2日おき…と徐々に減らしていったりします。このやり方は、「プロアクティブ療法」と言われます。細かいやり方は、皮膚科専門医が患者さん毎の症状やこれまでの経過をみて、適宜調整しています。

 

 

薬の強さや塗る回数は、患者さん一人一人のその時の皮膚の状態で異なるため、医師が定期的に皮膚の状態を目で見て確認することが大切です。

服を脱いで見せるのが面倒くさい、いつも使っている薬だけくれればよい、という患者さんも時々おられますが、それでは適切な治療は行えず、患者さんに不利益が生じます。当院を受診して頂く以上は、この点はご協力頂ければと思います。

症状が良くなってくれば、病院へ行く頻度も、週1回→2週間に1回→3週間に1回→月1回→2か月に1回…と徐々に減っていきます。

最終的には、保湿剤だけ塗っていれば悪化せず、半年に1回程度の通院でも、悪化せずいい状態を保てる、という状態までもっていける場合もあります。

それまでの辛抱だと思って頂き、最初はこまめに通院されることをお勧めします。

②たくさん塗ると副作用が心配だからうっすらとしか塗っていない → ×

ステロイド剤を塗る量の目安ですが、人差し指の先端から第1関節の長さ(約2cm)までチューブから絞り出した量(約0.5g)で、成人の手のひら2枚分を塗れる、と考えて下さい。

この0.5gを1 finger tip unit(FTU)と表します。

この量を実際に塗ってみて頂ければ実感できると思いますが、患者さんが普段塗っている量よりも、かなり多めです。

ステロイドの副作用が心配だからうっすらしか塗らない、という方もおられますが、ステロイドの副作用は、塗った量に比例して起こるのではなく、塗った期間と塗ったステロイドの強さに応じて起こることが知られています。また、たいていの副作用は一時的で、外用頻度を減らせば元に戻る事が知られています*。症状が良くなってきたら、徐々に弱めのステロイドやステロイド以外の薬(コレクチム、プロトピック)に移行していくことが重要です。そのためにも、十分な量をきちんと使って、早めに薬の強さを下げられるようにしていきます。

*ただしベリーストロングクラス(アンテベート、フルメタ)以上の強いステロイドを長期間塗ったことにより起こる皮膚萎縮は、外用を減らしても元に戻りにくいとされています。

③保湿はべたべたするのでしていない → ×

アトピー性皮膚炎の方は、もともと皮膚のバリア機能が低いことがわかっています。バリア機能が低いということは、皮膚の水分が外へ逃げてしまいやすいため乾燥しやすく、またダニや花粉などの外部からの刺激を受けやすいため痒みや炎症が起こりやすいということにつながります。保湿剤は、このバリア機能を補うために用います。皮膚に油の膜を張ることにより、水分が外へ逃げにくくなるため潤いを保ちやすくなり、外部からの刺激に対しても、膜がクッションの役割をしてくれるために、痒みや炎症が起こりにくくなるのです。

ステロイドなどの薬を塗ってある程度べたべたしているから保湿剤を塗らなくていいだろう、とおっしゃる患者さんもおられますが、保湿剤には水分をより保ちやすくなる機能があるため、必ず併用が必要です。ステロイドを塗る回数は基本的に1日2回ですが、保湿剤は、皮膚がかさかさしている場合は一日に何度も塗り足す必要があります。目安としては、ティッシュペーパーを肌にくっつけて、それが落ちないくらいのぺたぺたを保ってください、とお話ししています。この十分な保湿ができるかできないかで、治療の成功度が変わってきます。

④痒いのでごしごしこするように塗っている → ×

前述のとおり、アトピー性皮膚炎の方は皮膚のバリア機能が元々弱いのですが、こする刺激により、このバリア機能がますます破壊されてしまいます。薬を塗る際、保湿する際は、「こする」、「叩き込む」のではなく、皮膚に数か所、点で薬を置いて、手のひらで「押さえて」なじませるというイメージを持って下さい。また、風呂上りや手洗い後にタオルを使う際も、「拭く」のではなく、「押さえて」水分を「吸い取る」というイメージが大切です。毎日のちょっとした積み重ねが、肌の状態を良くすることにつながります。面倒で手間も時間もかかりますが、これも治療の上で大変重要なポイントです。

 

検査

<血液検査>

血清総 IgE 値:アレルギー疾患患者で高値となり、アトピー性皮膚炎患者では 500 IU/mL 以上となることが多い傾向にあります。血清総IgE 値はアレルギー素因を表していると考えられ、アトピー性皮膚炎の短期的な病勢の変化は反映しません。しかし長期の経過をみると、重症例が数か月以上コントロールされた場合などには低下するため、長期的なコントロールの指標にはなりえます。また、アトピー性皮膚炎患者ではダニ、ハウスダスト、花粉、真菌、食物など複数以上のアレルゲンに対して感作されていることが多いのが特徴です。血清特異的 IgE 抗体検査や皮膚のプリックテストなどで検出できますが、非特異的な感作、すなわち、特異的 IgE 抗体陽性と症状誘発に必ずしも因果関係がないこともしばしばみられますので、検査の解釈には注意が必要です。

末梢好酸球数:アトピー性皮膚炎では、喘息やアレルギー性鼻炎など他のアレルギー疾患よりも末梢血好酸球増多がより著しいことが多く、重症度に相関して増加するため、重症度の指標となります。

血清 LDH 値:重症例では血清 LDH 値が上昇し、重症度を表す指標の一つとなります。皮膚の炎症による組織傷害を反映していると考えられ,皮疹がコントロールされると正常値となります。

血清TARC(Thymus and activation-regulated chemokine)値:ケモカイン受容体 CCR4 のリガンドで、これを発現する Th2 細胞を遊走させます。アトピー性皮膚炎患者の血清中 TARC は重症度に一致し
て上昇し、血清 IgE 値、LDH 値、末梢血好酸球数と比べて、病勢をより鋭敏に反映します。保険適用
があり、定期的に測定して治療方針の見直しに役立てます。

 年齢によって基準値(単位:pg/dL)が異なります。

  • 6ヵ月~12か月齢:1367未満
  • 1~2歳:998未満
  • 2歳以上:743未満
  • 成人:450未満

血清SCCA2(Squamous cell carcinoma antigen2)値:2021年2月より小児(15歳以下)で保険適用となった項目です。体内の情報伝達物質であるサイトカイン(IL-4,IL-13) によって誘導される Th2関連分子で、アトピー性皮膚炎の動物モデルでバリア機能障害や皮膚炎症形成に働くことが明らかになっています。アトピー性皮膚炎の重症度と高い相関を示し、治療反応性もよく反応することが分かっています。 TARC と異なり,基準値は単一です。

治療

<塗り薬>

保湿剤:アトピー性皮膚炎治療において欠かせない治療です。薬だけ塗っていても保湿剤を塗らなければ根本的には改善していきません。

抗炎症剤:強い炎症に関しては、ステロイド以外の抗炎症剤では改善しない場合が多いですが、軽度~中等度の炎症に関しては、ステロイド以外の抗炎症剤でも改善が期待できます。

    ステロイド以外の抗炎症剤の塗り薬は、長らくプロトピックしか存在しませんでした。プロトピックは刺激感があるため、それが苦手で使用できない方に対しては、炎症が落ち着いた段階で処方できる塗り薬が弱いステロイド外用剤しかなく、やむを得ず長期間ステロイドを使用するケースがありました。

    しかし近年、コレクチムをはじめとした新規のアトピー性皮膚炎外用薬が登場し、軽症~中等症の方に使用できる抗炎症作用のある塗り薬の選択肢が広がりました。

    症状がひどい時はステロイド外用剤、落ち着いたらステロイド以外の抗炎症外用剤、という流れで治療を行います。それほど症状がひどくなければ最初からステロイド以外の抗炎症剤を使用する場合もあります。

 ・ステロイド軟膏/クリーム:炎症の度合いや塗る部位によって、強さの異なる薬を使い分けます。

 ・プロトピック(タクロリムス)軟膏(0.1%、0.03%):軽症~中等症に用います。刺激感や灼熱感を感じる場合があります。2歳未満の小児は使用できません。2歳以上の小児は、0.3%製剤を使用できます。妊娠中の方には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用できます。授乳中の方には使用できません。本剤を使用中は日光への暴露を控えて頂き、紫外線療法も行いません。

 ・コレクチム(デルゴシチニブ)軟膏(0.5%、0.25%):軽症~中等症に用います。外用ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤という薬です。2歳未満の小児は使用できません。2歳以上の小児は0.25%製剤を使用できます(0.5製剤も症状によっては使用できます)。妊娠中の方には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用できます。授乳中の方には使用できません。

 ・モイゼルト(ジファミラスト)軟膏(1%、0.3%):軽症~中等症に用います。2歳未満の小児は使用できません。2歳以上の小児は0.3%製剤を使用できます(1%製剤も症状によっては使用できます)。妊娠中の方、授乳中の方には使用できません。妊娠可能年齢の方は、使用中および使用後一定期間の避妊が必要です。

注)

  • 「炎症がひどい時でもステロイドの塗り薬を絶対に使いたくない」、というステロイド忌避(きひ)の方には、適切な治療をご案内できないため、当院では治療をお引き受けできません。炎症がひどい時はステロイド以外の塗り薬(例:プロトピック、コレクチム、モイゼルト)ではどうしても良くならない段階があります。当院では日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎ガイドラインに基づき、必要時はステロイドの塗り薬を用いて、皮膚科専門医が標準的な治療を行っております。炎症がひどい段階が過ぎたらステロイドの強さを徐々に弱くしていき、最終的にはステロイド以外の塗り薬(例:プロトピック、コレクチム、モイゼルト)に徐々に移行していくことを目標にしてガイドラインに則った治療を行っています。予めご理解頂けない方には、当院では治療をお引き受けできません。
  • いわゆる民間療法などと併用した治療をして欲しいなどのご要望は承れませんので、ご了承下さい。
<飲み薬> 
  • 抗ヒスタミン剤:アレルギー反応と、痒みを抑えるために使います。引っ搔いて症状を悪くしている方には処方することがあります。
  • IPD(アイピーディー):炎症を引き起こすサイトカインという物質の産生を抑制することにより、アレルギー反応を抑えます。抗ヒスタミンと合わせて使います。
  • 漢方薬:消風散、十味敗毒湯などを補助的に用いることがあります。
  • オルミエント、リンヴォック、サイバインコ:新しい治療薬です。全身療法の項目をご参照下さい。
<紫外線療法(光線治療)>

  • 上記の治療でなかなか改善しない方に行うことがある治療です。波長311(±2)nmの紫外線を出す機械(ナローバンド UVB)、波長308nmの紫外線を出す機械(エキシマライト)を用いて、皮膚の炎症を抑えます。
  • 当院では、全身型のナローバンドUVB照射器、部分型のエキシマライトを導入しています。全身に症状が出ている方も比較的短時間で照射できる他、部分的な病変にも対応できますので、症状が重い方から軽症の方まで幅広い状態の方に対応可能です。
  • 妊娠中・授乳中の方にも安心して照射できます。
  • お子さんに関しては、10歳以上は全身型の機械で照射が可能で、10歳未満は部分型の機械での照射が可能です。
  • 目の保護のためゴーグルを付けて頂きます。

紫外線療法について詳しくはこちら

<全身療法>

 全身療法とは患部(局所)に薬を塗る外用療法ではなく、全身に対して行われる治療のことです。ステロイド・プロトピック・コレクチムなどの塗り薬を一定の期間きちんと使ってもなかなか改善しない、中等症以上のアトピー性皮膚炎の方に対して行います。

 近年、新薬が次々に登場し、これまでどんな治療でも改善が見られなかった患者さんに、かなりの効果をもたらしています。いずれの薬も、「ステロイド・プロトピック・コレクチムなどの塗り薬を一定の期間きちんと使ってもなかなか改善しない、中等症以上の方」にしか投与できないという決まりがあり、他にもいろいろな条件があります。診察の際に全身の皮膚の状態を実際に見て(衣服を脱いで頂く必要があります)、どの程度の重症度なのかを判定する必要があります。費用の目安は、3割負担で1か月あたり4~5万円(薬の種類や、保険の自己負担割合によります)と高額ですが、高額療養費制度を利用できる薬もあります。詳しくは、ご自身の加入している健康保険組合にご確認頂く必要があります。また、患者さんからの希望があっても、条件に該当しなければ投与できない点にご注意下さい。

 全身療法を希望して来院される患者さんがよく言われるのが、「この薬を始めたら、面倒な保湿や塗り薬をしないで済む」という誤解です。これらの薬を始めても、皮膚のバリアが弱いという元々の体質自体は改善されないため、保湿をやめることはできません。また、炎症は少しずつ時間をかけて良くなっていきますので、しばらく(数か月から数年)は塗り薬も必要です(ただしステロイドの強さは症状が良くなるにつれて下がっていきますし、塗る回数も減っていきます。最終的にはステロイド以外のプロトピック、コレクチムに移行します。

 

  1.デュピクセント(デュピルマブ):「IL-4」と「IL-13」という物質(サイトカイン;体内の細胞同士の情報伝達を行うタンパク質)の働きを直接抑えることで                           皮膚の2型炎症反応(Th2細胞による炎症)を抑制する新しいタイプのお薬です。2週間に一度注射する薬で、生後6ヶ月以上の方が使用できます(2023年9月より小児の患者さんにも使用可能となりました)妊娠中・授乳中の方には、治療上の有益性が危険性を上回る場合に投与可、という記載がありますので、ご相談の上の投与となります。アトピー性皮膚炎の皮膚の内部に起きている炎症反応を抑えることによって、かゆみなどの症状や、皮疹などの皮膚症状を改善します。最初のうちはクリニックで注射します。何度か院内でご自身で注射する練習をして頂いた後、ご自宅で注射する段階に移行します。症状が安定してきたら、数本まとめて処方しますので、通院回数を減らすことができます。副作用として頻度が高いものに結膜炎があります。投与を始める前に、予め採血をして、投与しても問題のない状態かどうかを確認する必要があります。

 

 

 

 

 

  2.オルミエント(バリシチニブ):JAK阻害薬と呼ばれる薬です。アトピー性皮膚炎では、体内でサイトカインという情報伝達物質が過剰に増えており、それが炎症やアレルギー反応を引き起こしています。リンヴォックは、免疫をつかさどる細胞の中にある「JAK」と分に結合して、炎症性サイトカインが過剰につくり出されることを防ぎ、かゆみや皮膚の炎症を抑えます。1日1回の飲み薬で、15歳以上の方が使用できます。妊娠中・授乳中は使用できません。投与を始める前に、予めレントゲン、採血を行い、投与しても問題のない状態かどうかを確認する必要があります(当院にはレントゲンはありませんので、かかりつけの内科で行って頂く必要があります)

 

 

 

 

 

  3.リンヴォック(ウパダシチニブ):JAK阻害薬と呼ばれる薬です。アトピー性皮膚炎では、体内でサイトカインという情報伝達物質が過剰に増えており、それが炎症やアレルギー反応を引き起こしています。リンヴォックは、免疫をつかさどる細胞の中にある「JAK」という部分に結合して、炎症性サイトカインが過剰につくり出されることを防ぎ、かゆみや皮膚の炎症を抑えます。1日1回の飲み薬で、12歳以上の方が使用できます。妊娠中・授乳中は使用できません。副作用として頻度が高いものに、ニキビ、帯状疱疹があります。投与を始める前に、予めレントゲン、採血を行い、投与しても問題のない状態かどうかを確認する必要があります(当院にはレントゲンはありませんので、かかりつけの内科で行って頂く必要があります)。

  4.サイバインコ(アブロシチニブ):JAK阻害薬と呼ばれる薬です。アトピー性皮膚炎では、体内でサイトカインという情報伝達物質が過剰に増えており、それが炎症やアレルギー反応を引き起こしています。リンヴォックは、免疫をつかさどる細胞の中にある「JAK」という部分に結合して、炎症性サイトカインが過剰につくり出されることを防ぎ、かゆみや皮膚の炎症を抑えます。1日1回の飲み薬で、12歳以上の方が使用できます。妊娠中・授乳中は使用できません。副作用として頻度が高いものに、胃腸障害があります。投与を始める前に、予めレントゲン、採血を行い、投与しても問題のない状態かどうかを確認する必要があります(当院にはレントゲンはありませんので、かかりつけの内科で行って頂く必要があります)。

アトピー性皮膚炎Q&A

Q:ステロイドは副作用があるので危ないのではないですか?

→A:長期間にわたって強いステロイドを使い続けると、皮膚が薄くなり、毛細血管が拡張するという副作用が起こる事が確かにあります。ただ、この副作用は、適切な強さのステロイドを、適切な期間、時々薬をお休みする期間を設けながら使用していれば、避ける事が可能です。自己判断で強いステロイドを塗り続けることは危険ですが、皮膚科専門医のもとで、正しく使う分には、心配いりません。

Q:ステロイドは一度使ったらやめられなくなるのではないですか?やめたとたんにリバウンドが起きると聞きましたが…

→A:炎症が治まり切らないうちに自分の判断で塗るのをやめてしまうと、一見治ったように見えた炎症が、ぶりかえしてくることはありますが、これはリバウンドとは言いません。炎症が完全に治まるまで、医師の指定した強さの薬で、塗る頻度をしっかり守って治療していけば、このようなぶり返しを防ぐことができます。

Q:目の周りにステロイドを使うと白内障になると聞きましたが…

→A:アトピー性皮膚炎の患者さんが白内障を発症することは確かにあり、一時期ステロイドの塗り薬のせいではないかと言われていたこともありました。ただし、最近では、白内障を発症するのは、痒みの為に目の周りをこすったり、たたいたりする外傷性の原因によると考えられておりますので、炎症がある間はきちんとステロイドを使って頂くことが大切です。落ち着いてきたらコレクチムやプロトピックなどのステロイド以外の薬に変更していきます。

Q:ステロイドを使うと皮膚が黒くなるのですよね?

→A:ステロイドのせいで黒くなるのではありません。皮膚の炎症は、最初は赤いですが、治まってくると茶色→黒っぽく変化していきます。これを、炎症後色素沈着といいます。つまり、ステロイドの使用の有無に関わらず、炎症が起こった皮膚は黒っぽく変化することがあるのです。ステロイドを使わなかった場合、炎症が続く期間が長引き、結果として、ステロイドを使った場合よりも黒ずみがひどくなってしまう場合もあります。またこの黒ずみは、数か月かけて徐々に薄くなっていきます。黒い部分には紫外線の影響が出やすく、もっと黒くなりやすいですから、日焼け止めはしっかり使用して、それ以上黒くしないように心がけることも重要です。早めに炎症を抑え、再発を抑えることが、黒ずみをなるべく起こさないようにする上で最も大切です。

Q:ステロイドを使うとニキビができるので使いたくありません

→A:ステロイド塗った部分の皮膚の免疫力は低下しますので、ニキビができやすくなるのは確かです。ただ、ステロイドを使用しないと良くならない炎症があれば、多少ニキビができやすくなることは容認して、炎症の治療を優先した方がいい場合もあります。状態によってはニキビの薬を併用したり塗り分けをしたりすることも可能ですから、その都度医師にご相談下さい。

Q:ステロイドは皮膚に溜まっていくので子供に塗ったら危ないのではないですか?

→A:ステロイドが皮膚に溜まっていくという事実はありません。仮に溜まっていくとしたら、ステロイドを塗らなくなっても暫く効果が続くはずですが、実際はステロイドを突然塗らなくなると、すぐに症状が悪くなりますので、皮膚に溜まっていかないと考えるのが妥当です。

Q:ステロイドを使うと成長障害が起こるから子供には塗らない方がよいのではないですか?

→A:乳幼児に、飲み薬や注射のステロイド剤を、長期間にわたって使用した場合には、成長障害が起こる場合もあります。しかし、塗り薬のステロイドの場合は、医師の指示通り正しく使用していれば、そのような心配はほとんどありません。

Q:妊娠したのでステロイドは使いたくないです

→A:お腹の赤ちゃんに何かあったら心配というのは非常によくわかります。ただ、痒みで眠れなかったり、強いストレスになっている状態は、妊娠自体に悪影響がある場合があります。医師に相談しながら、症状に応じたステロイドを適切に使っていくことが必要です。

Q:アトピーの原因は何ですか?親がアトピーだと子供もアトピーになるのですか?

→A:アトピー性皮膚炎になりやすい体質(アトピー素因)というのはありますが、親がアトピーだと子供に遺伝するというようなことはありません。

アトピー性皮膚炎になりやすい体質(アトピー素因)というのは、①家族や患者さんご本人に気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎のいずれか(または複数)がある、または、②アレルギーに関与するIgEという抗体を作りやすい体質である、のいずれかに該当する場合をいいます。

ただし、この「アトピーになりやすい体質(アトピー素因)」があるからといって、必ずアトピー性皮膚炎を発症するわけではありません。

他にも、皮膚のバリア機能の脆弱性(=弱いこと)、皮膚の過敏反応などの様々な要因が複雑に絡み合って、発症すると言われています。要するに、アトピー性皮膚炎を発症するかどうかは一つの要因では決まっておらず、色々な要因が合わさって決まる、ということです。

Q:どうしたら痒みを減らすことができますか?

→A:アトピーが悪くなる原因としては、引っ掻くことによる皮膚への刺激、精神的ストレス、生活リズムの悪化、温熱刺激、発汗、ウール繊維の刺激、食物、飲酒、感冒(かぜ)などが知られており、中でも皮膚を引っ掻く刺激は、皮膚炎の悪化に深く関係しています。皮膚をひっかくと、皮膚の痒みの神経が活性化してしまい、ますます痒くなってしまい、悪循環です。皮膚を冷やすと痒みが少し治まる事が知られている為、アイスノンなどを痒い部分当てることをお勧めしています。長風呂は避ける、シャワーの温度を低くする、などの工夫も必要です。また、痒みに対する注射薬が現在治験中ですので、これが使えるようになれば治療の選択肢が広がります(次項のQ&参照)。

Q:今後新しい薬は出てきますか?

→A:アトピー性皮膚炎の掻痒感(痒み)に対する治療法として、ネモリズマブ(抗IL-31受容体Aモノクローナル抗体)という注射薬が日本国内で治験中です。治験が通って承認されれば、使えるようになる可能性があります。

 

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME